SMAコラム
放射線は私たちの身体にどう影響するのか

 東日本大震災により未曾有の被害を受けた東日本沿岸地域。なかでも東京電力福島第一原子力発電所の事故による放射能漏れは今なお続き、事故収束までもまだまだ時間を要することからも、その不安はなかなか取り除けません。4月中旬、SMA主宰ドクターの湯沢斉先生が、いち早く、千葉北エリアの海岸で放射性物質の測定を行いました。その結果報告とともに、放射能はいったい健康にどんな影響があるのか、私たちサーファーが知っておいていい一般常識をまとめてみました。


『放射線は私たちの身体にどう影響するのか』

 放射線を発する物質が「放射線物質」と呼ばれています。体内に取り込まれて問題となるのは、よく耳にする「ヨウ素」、「セシウム」、「ストロンチウム」、「プルトニウム」などがあります。
 屋外に漏れた放射線物質から出る放射線を浴びることを「被曝」といいますが、空気中に浮遊する放射線物質や衣服や髪などについて放射線物質から出る放射線を浴びることを「外部被曝」といいます。
 これに対して、鼻や口、皮膚の傷口から体内に入った放射性物質から放射線を浴びることを「内部被曝」といいます。
 放射性物質は細菌などと同じように、身体の表面に付着すると手などを介して口に入りやすいため、避難時には皮膚を被う服装をし、口と鼻を何重にもたたんだハンカチなどで被って、体内に入るのは防ぐようにします。
 放射線の人体への影響は、強い放射線があたったときほど大きくなりますが、その放射線の種類によっても異なります。放射線には、エックス線、ガンマ線、中性子線などがあり、中性子線はエックス線の5〜20倍、人体への影響も大きくなります。
 過去の放射線事故のデータなどから、3000〜5000ミリ・シーベルトの強い放射線を一度に全身に浴び、何も治療をしないでいると、60日以内に約半数が死亡すると考えられています。

放射性ヨウ素:甲状腺に溜まりやすく、体内に取り込まれる量が多いと甲状腺がんになる危険性が高まる。

暫定基準値(1kgあたりのベクレルの値)

飲料水/牛乳・乳製品300
野菜類(根菜、芋類を除く)2000

放射性セシウム:主に筋肉に蓄積して放射線を出し続ける。

暫定基準値(1kgあたりのベクレルの値)

飲料水/牛乳・乳製品200
野菜類/穀類/肉・卵・魚・その他500

放射性ストロンチウム:主に骨に蓄積して放射線を出し続ける。検出が難しいがセシウムと共に出ることが多い。

暫定基準値(1kgあたりのベクレルの値)

乳幼児用食品/飲料水/牛乳・乳製品20
野菜類/穀類/肉・卵・魚・その他100

プルトニウム:体内に長くとどまり、破壊力が強いアルファ線を出すため、人体への影響が最も大きい物質。肺に入ると肺がんになる危険性が高くなる。

暫定基準値(1kgあたりのベクレルの値)

乳幼児用食品/飲料水/牛乳・乳製品1
野菜類/穀類/肉・卵・魚・その他10



『半減期とは放射線を出す能力が半分になる期間のこと』

 放射性物質が放射線を出す能力(放射能)が半分になる期間のことを「半減期」と呼びます。放射性ヨウ素(ヨウ素131)は8日、また放射性セリウム(セリウム137)は約30年とされています。しかし、それとは別に、体内の放射性物質の量が半分になるまでの期間というのもあります。体内に取り込まれてしまった放射性物質すべてが、ずっと体内にとどまっているわけではなく、例えば、セシウム137は体液などに溶けていて排出されやすいので、100日程度で半減します。
 また、水道水の放射性物質の値は雨の後に上がりやすい傾向にあります。しかし、水道水であっても、規制値を下回るときに清潔な容器に入れ、冷蔵庫などで保存しておくと飲料として安全に飲むことはできます。


『100ミリ・シーベルト以上の放射線量には注意して』

 現在、文部科学省がウエブサイトなどで報じている放射線量は、マイクロ・シーベルト毎時(μSV /h)の単位で表現されています。報告される放射線量は、小数点以下の数値で示されているときが多いようです(「0.02〜0.06マイクロ・シーベルト/時間」が正常値)。表示される数値が小数点以下だと安心していいといいえるでしょう。
 また、放射線の健康への影響で一番心配されるのが、発ガンになる危険性です。放射線量で見ると、発ガンして死ぬ危険性が0.5%高まるとされている放射線の量は「100ミリ・シーベルト」です。一般的に、「放射線の影響で明らかな健康障害が出るのは100ミリ・シーベルト以上」とされているはそのためです。
 ところで、喫煙が発ガンの大きな要因となることは誰でもが知っていると事実ですが、100ミリ・シーベルト以上での危険性と喫煙によって発ガンする危険性を比べると、実は、喫煙の方がはるかに大きいという皮肉な結果も報告されています。

※「シーベルト」は人体の放射線の影響の度合いを表す単位です。1シーベルト=1000ミリ・シーベルト、1ミリ・シーベルト=1000マイクロ・シーベルトです。また、「ベクレル」という単位もよく聞きますが、これは、放射線ヨウ素や放射性セシウムなどの放射性物質が、「放射線を出す度合い」を表す単位です。1秒間に何個の放射性物質が放射線を出すかを表していて、1秒間に1個ならば1ベクレル。食品や水、土壌にどのくらいの放射性物質に含まれるかを調べるときに用いられます。

(2011年5月20日)


【湯沢 斉ドクターの放射線量測定報告】

■測定日、2011年4月16日、17日
■測定場所:千葉県九十九里町片貝海岸
(※漁港より上は被災地の為配慮し、測定しませんでした)
(1)波打ち際から2メートルでの砂浜
(2)波打ち際から10メートル離れた砂浜
■測定時間:1時間
■検者:整形外科専門医 湯澤 斎
■風向き:南東風
■潮回り:中潮
■測定時間帯:満潮から干潮へ変わる時間帯
■平均測定時間:1時間30分
■使用したガイガーカウンター:ドイツ製、ガンマ・スカウト
※放射性物質の水質検査は、していません

【測定結果】
●(A)(B)2地点を測定しましたが、経時的な経過において数値の位差はみられませんでした。
(半減期が長い放射性セシウムなどを見るために行っています)
●測定した、大気中放射性濃度:0.05μSV(千葉市の公式モニタリング値にほぼ等しい誤差0.01~0.02程度)

測定平均値 0.08μSV /h
測定最大値 0.15μSV /h
測定最小値 0.04μSV /h


以上の結果でしたが、これらのデータは、風向きや潮回り、潮の流れ、何より福島第一原発の放射性物質の人為的な放水など、様々な誘因が関連しています。

※これらのデータは、公的なものでは無く、あくまで一個人が測定したものですので、データ的に誤差があるかも知れませんのでご了承ください。
※私たちは日頃から宇宙や地面などの自然環境から年間1〜10ミリ・マイクロシーベルト(1時間あたりに0.01〜0.10マイクロ・シーベルト)程度の放射線を浴びて生活しています。今回の想定値は、この健康への悪影響を心配する必要がないレベルの放射線量でした。